オフチョベットしたテフをマブガッド(エチオピア料理)

前置き

我が友、鴨川の怪人は大変なミーハーである。フットワーク軽く色々始めてみるのは素晴らしいが、なかなか磨きをかけてくれない。「オフチョベットしたテフをマブガッド」はネット上では有名だと思うが、これが気になったようで、インジェラを食べに行こうと言い出す。ネット上で有名なネタだから試してみるという態度に、またかと思いつつも、常々世界中の料理を食べてみたいと思っているので、機会を逃す訳にもいかず行ってみることにした。

手元の本*1によると、アフリカの食文化は多様であるものの、広く見られる特徴として

  1. 主食・副食の概念
  2. のむ食事
  3. 食事は熱くなければならない

の3点が挙げられるとしている。さらに、エチオピアという国についてもいくつか抜粋しておく、

  • 人口・都市の大部分はエチオピア高原に集中しており、赤道に近いにも関わらず冷涼な気候が特徴的
  • イタリアに一時期侵略されたことはあるが、植民地化されたことはないため一貫して独立国家
  • 宗教はイスラム教と東方教会系のエチオピア教会が発展
  • 独自の文字が早い段階から用いられているなど、アフリカ諸国と比較しても特異な文化が多い

これからわかるように、エチオピアは少々特異な国である。そのため、食文化も上の3箇条から外れる部分がある。

インジェラエチオピアにおける代表的な主食であるが、噛む食べ物であり、熱い状態で食べるものではない。テフという雑穀を発行させて作ったクレープの様なものだが、製法は地方差があるようだ。これも引用しておくと、

  1. テフの粉をバターで練り、熱湯を加えて白くなるまで加熱したものを酸っぱいバターの中に注ぎ込み、土釜で焼く
  2. テフの粉を水で練って、数日置いて発酵させたものを、焼き板の上に延ばして焼き上げる

があるらしく、日本で知られているのは後者だと思われる。何はともあれ、見た目は雑巾、食感は蒸しパン、そして酸味があると、正直私には美味しいと思えないが、不味いと否定するほど絶望的な風味でもない独特なものである。

リトルエチオピア

鴨川の怪人と共に向かったのは四ツ木にある「リトルエチオピア」。エチオピア料理は初体験である。曰く、提供が遅いとの噂があるので、一気に注文すべきだと。そこで、インジェラに併せる料理をお試しに3品注文してみる。

リトルエチオピア

この画像のように、インジェラの上に、料理を乗せて提供するのが伝統的なスタイルらしい。しかし、料理の下にあるインジェラは水分を吸ってぶよぶよとなり、いよいよ辛いので、伝統的でない方が美味しくいただける可能性はある。

最初の数口は、興味深い風味だとしか言いようがないが、それなりに食べられる。とはいえ、二人で食べるにはなかなか量があり、次第に苦行の体を成しはじめた挙句、相方がため息吐きながら食べるので、失う食欲と湧き出る殺意、どうしてやろうか。彼と出かける度に殺意を覚えているのは気のせいだろうか。

上の料理との組み合わせで、さまざまな風味を楽しめるという人もいるが、そのような喜びは覚えられず、ずっとぶよぶよしたものを食べているだけというのが正直なところであった。やっとの思いで食べ切り、エチオピア料理は懲り懲りだと思ったが、食後のエチオピアンコーヒー、これだけは絶品であった。

隣の席に若い男性二人が座っていたが、会話を横聞きしていると、やたらマニアックなスパイスの話や、カレー部などの単語が飛び交っている。もしや母校が同じなのではという予感が湧くが、そこまで社交的でもないので放っておいた。

クィーン シーバ

先の体験で、エチオピア料理はもうこりごりだと思っていた。しかし、我が友、欲張り小僧が、評価の良いエチオピア料理店がありますよと、余計な情報を見つけだす。この種の苦行はネタになるので行かざるをえず、向かったのが中目黒にある「クィーン シーバ」であった。トラディショナルコースを注文したところ、

ひよこ豆のサモサ
サラダ
ヤギと鶏のケバブ
インジェラ&ダボと盛り合わせ
パンナコッタ&エチオピアンコーヒー

といったメニューが登場。エチオピア要素は少ない気がするが、これといった癖もなくしっかり美味しい。問題のインジェラも、リトルエチオピアより酸味が弱いのか、付け合わせの味の問題なのか、はたまた量が適正なのか、同行者の問題なのか、要因は色々思い当たるが、苦痛になることもなく楽しめてしまった、もちろん良いことである。強いていうなら、ハーブの香りをつけすぎなのか、コーヒー自体の問題なのかはよくわからないが、エチオピアンコーヒーだけがイマイチ舌に合わなかった。ということで、日本人の舌にも問題なく受け入れられる風味であったが、黒人もちらほら食事をしていたので、現地の人にも受容される味なのかもしれない。エチオピア料理を食べたい初心者にはこちらを推しておく。

*1:「世界の食文化 11 アフリカ」ISBN 9784540040870